Plurality in Japan(日本語)
7/24 16:10-16:50
講演資料
https://gyazo.com/7db56aeee1d57a04dde494dad974e008
Hirokazu will explore the concept of plurality in Japan and its societal impact.
日本における「多元性」という概念とその社会的影響を探ります。
https://pbs.twimg.com/media/GTLSaY1XkAA91dV?format=jpg&name=medium#.png
リンク集
Plurality in Japan 日本語バージョン
軽く説明
英語版スライドの説明
軽く説明
Slidoの質疑を確認
残りの説明
時間があればSlidoの質疑を確認
時間があれば残りの説明
自己紹介
西尾泰和(NISHIO Hirokazu, @nishio)
サイボウズラボ 主幹研究員, 知的生産性の向上が研究テーマ
一般社団法人未踏 理事, 17歳以下のクリエータに資金提供と伴走支援する未踏ジュニアをやっている
Pluralityとは
https://gyazo.com/c460c9d699c6e12d138071ddbc1d136d
「違い」を乗り越え、協働するための技術
その技術を使うことによって、社会をより良い方向にアップデートしていこう、という運動
https://gyazo.com/4ac3b9a1f9c315fedd31f971c39f7df2
新しく作られつつある社会は、まだ形が定まっていないし、みんな見たことがない
なので既存の言葉で説明し尽くすことはできない
新しい言葉を作り、文脈に接続していくことで、新しい意味の言葉自体を生み出さなければならない
英語版のスライドを解説する
Plurality日本語版がサイボウズ式ブックスからでます
Audrey+Glen+Halskの鼎談インタビューもサイボウズ式のWeb記事で公開予定
なぜサイボウズがPluralityに協力するのか?
「違い」を乗り越え、協働するための技術ってチームワークあふれる社会を創るための技術だよね
事例
2018年6月27日
ここで一旦Slidoを見る
残り時間で掘り下げ
25分では全体は解説できない
俯瞰した解説をすると抽象的になる
https://gyazo.com/48c48d4c351f9b6e246559914e2a39e6
それは検索などすれば見つかると思うので、ここではFunding the Commonsの文脈につなげて面白いトピックを紹介する
https://gyazo.com/e7c55e5d2142df92119c3122a529c1fe
食べ物が保存不可能であった場合、一人で食べられる以上のものはみんなで分け合う方が、食べきれない量を腐らせてしまうよりも合理的だった。(交換様式A) 食べ物の保存が可能になったことで、分け与える合理性がなくなった。
飢えた人は食料が欲しいので、何かを差し出して交換しなければならない。
このときに「何も資産を持たない人」が差し出すことができるのは、人生の時間だった。
こうして時間の切り売りという「他人への従属」が発生した。(交換様式B)
これが生産活動に従事しない軍隊へと発展していく。
常備軍の発生はかなり古い、メソポタミアのころにはすでに記録が残ってる
軍事力によって外的から中の「人々」を守る「国家」が生まれて行った
軍事力によって他人を排除することで、誰のものでもなかった「土地」が私有されるようになった
同じく大昔に「保存のできるトークン」が生まれた
のちに貨幣と呼ばれるようになる
https://gyazo.com/b977fd69e17176fe2b39ae395d0f4537
交換のタイミングを同期する必要がなくなり、交換が容易になった(交換様式C)
「保存できる食料」よりももっとコンパクトに安定して保存できるようになった、価値の蓄積が容易になった
価値の蓄積による軍事力はこのトークンの信頼性を高め、逆にこのトークンは価値の蓄積の安定性を高める、という相乗効果が発生した
しかしトークンの交換による市場が成長するに従って、地理的に区分された国家は邪魔になってくる。
軍事力で外敵を排除することによって中の「友」を守る仕組みとしての「国家」は国境を強化しようとするが、交易は国境を弱めようとする
市場にはつながればつながるほど有益になる性質があったからだ。
商人が国家の運営に干渉していく
中世ヨーロッパのヴェネツィアなど
国家に対して開かれた交易を要求する力が強くなっていき、ついには地球規模の市場が成立するようになった。
ちょっとそこのコンビニに行って原材料を見れば世界中で収穫されたものが使われている
https://gyazo.com/1e0dfb89715fe6262f3a235e196ead39
ここまでが柄谷行人の交換様式論における交換様式A, B, Cのざっくりとした解説だった
ところで、このスケールで世界史を見るなら、今は「電子計算機が生まれて最初の100年」の期間
新しい種類の「もの(財)」が生まれた、それはデジタル財
無視できるコストで複製ができる
「使っても減らない財」
食べ物をを分け与えることで社会の幸福が増えていた時代と同じように、デジタル財をコピーすることで社会の幸福の総量が増える
ところが、デジタル財は食べられない
https://gyazo.com/11c2f5e7dcce3880bfb86eefd4c841c9https://gyazo.com/1e0dfb89715fe6262f3a235e196ead39
ここまでの文明の進歩の過程で、ほとんどの人が自分の食べ物を貨幣との交換で手に入れるようになってしまった
デジタル財を作って無償でわけあたえていたのでは飢えて死んでしまう
社会的には作られたデジタル財が無償で少しでも多くの人にコピーされた方が社会全体の幸福がアップする
社会がデジタル財を生み出す人に死なない程度のFundingをして、つくられたデジタル財をみんなの共有財Commonsにしたらいいじゃん→Funding the Commons
(共有財Common Goodsと公共財Public Goodsの違いが気になる人へ: Funding the CommonsはWe build a bridge between builders and researchers focused on transforming the funding mechanisms for public goods.って言ってるのでここでは区別してない)
ではこの辺りのことに関してPluralityはどう考えているか
https://gyazo.com/6372900530b7163c3ae1bcacc73be72f
重要な概念として「個人でも全体でもなく、交差するいくつものグループ」という世界観
ここから考えるとデジタル財に関して「個人の私有」と「全世界共有」のどちらの配布形態を選ぼうと考えてるのは誤った二者択一の感があるね
https://gyazo.com/ab7d13bb2cc9e46965e9277f47428271
https://gyazo.com/29b1c6bd44a604f6b78c354153d5d075
この問題が今後解決されていく必要のあるものだとの認識が高まっている感じ
そしてweb3技術がデジタル財に新しい所有や提供の選択肢を作り出すことが解決の糸口になるかもしれないな、という状況
他のセッションでweb3関連のものが割とあるのはそういう理由
この図についてもう少し話す
https://gyazo.com/6372900530b7163c3ae1bcacc73be72f
これに関連して21世紀のイデオロギーという整理をして、3つのイデオロギーの1つ「デジタル民主主義」をPlurality本では強く推している https://gyazo.com/2517ff5e7972e528df4117e19cd6e3aa
統合テクノクラシー(synthetic technocracy)はAIの進歩で人間を超える存在ができるからみんなそれに任せたらいいよね、という思想 「PluralityはSingularity(シンギュラリティ)の対義語」と説明されるときにシンギュラリティって言葉で暗示されてるのはこのイデオロギー
これがindivisual / intersecting group / wholeの図のwholeに相当する
https://gyazo.com/6372900530b7163c3ae1bcacc73be72f
これの対義語と考えてPluralityをindividualを目指すものだと考えるとうまく理解できない
特にweb3の人が中央集権と非中央集権の対立構図と勘違いしてしまう
暗号技術などを使って個人の自由を強化し、それを制限する政府の力を弱体化しようとする
いわば市場のメカニズムに任せたらいいよねという思想
これがindivisual / intersecting group / wholeの図のindivisualに相当する
技術によって社会組織を回避し、分解し、信頼をアルゴリズムで置き換えるビジョン by Glen
たとえば昨日のMeetupでは「将来トラストレスな政府が作れると思うか?」という問いに対してAudreyは I don't like the word trustless. I like the word trust building.と回答していた
トラストレスを追い求める方向は信頼によって構築された既存の社会構造を分解し破壊することであり、それは好ましくないことだと思っているようだ
この3つのイデオロギーを見て自分はどの要素が強いのかを考えてみると良い
しばしば賛否が分かれる、また分かれなくても具体的な方針に差が出る
たとえば"少子高齢化により高齢者福祉の維持が困難になっている、どうするべきか?"
ST: 介護ロボットやAIを導入し、人手不足を補い、介護の質を向上させる。
CL: 規制を緩和し、企業間の競争を活発化させることで、革新的な高齢者向けサービスや製品が生まれるようにする。
DD: 地域社会のネットワークを強化し、ボランティアや地域活動を通じて高齢者を支援するシステムを作る。
それぞれ一理ある
西尾個人は「長期的には統合テクノクラシーだが、その手前にまずデジタル民主主義が必要」という考え
AIが人間より賢くなった時点でAIによる統治の方が人間による統治よりも優れたものになる。
ただし「人々を幸福に統治する」と言った場合の「幸福」の定義を人々の一部が行うと他の人々に対する幸福の形の押し付けになってよくないから、全員の多様な幸福の形を収集する方法が必要になる。
それはデジタル民主主義なわけなので「統合テクノクラシーの手前にデジタル民主主義が必要」という結論になる。
後で賢いAIによる独裁制を受け入れるかどうかと無関係に、現時点ではデジタル民主主義を推し進めるのが良い。
受け入れるかどうかも、デジタル民主主義で決めたらいい。
Slidoを確認する
このあたりで流石にいい時間なのではと思う
まだ時間がありそうなら下の話題を話す
情報を複製し配信する技術の発展により、一人の人が大勢の人に考えを伝えることが容易になった。
しかし大勢が情報発信すると、一人が受け取る情報量が膨大になり情報洪水で溺れてしまう。
人々が積極的に発信する社会や会社では、大勢の意見を聞くことを支援する技術が重要になる。
https://gyazo.com/8aed1a6ee239c672d1e504cdb48d0e9e
(技術の進歩は)何百万人もの人々が仲間の意見の分布から抽出されたエッセンスを聞くことができる「ブロードリスニング」を可能にし、大規模で民主的な熟議を強化することができます。
ただし、集めた大勢の声の理解を促すところどまりで、議論を促す機能はない
議論の部分は都知事選ではGitHubを使ったが、Talk to the Cityからの情報の流れがスムーズではなかった
安野チーム内の政策チームがレポートをみてissue化などをしていた
https://gyazo.com/c4775b6d250ef9e9a7fbc03499cd3462
こちらはリアルタイムで意見のクラスターを見ながら、新しい意見を投稿することができる
深い議論を推進するツールといえる
ただしモデレータのコストが高い
Talk to the Cityに対するAudreyのコメント
10年前、vTaiwanプロジェクトは限られた範囲でしか活動できませんでした。技術がまだ発展しておらず、関係者がその技術に適応するのに時間がかかったためです。
しかし、今では言語モデル(AI)の進歩により、この問題が解決されました。
2014年には、多くの人々の意見を集めて、全ての微妙なニュアンスを保持することは不可能でしたが、現在では「Talk to the City」というツールのおかげで、それが非常に簡単かつ安価にできるようになりました。
このツールは広範な意見を集めることができ、その結果、公共の議論のあり方を変える可能性があります。
この二つのブロードリスニング技術がそれぞれを補完するように進化していくと良いのではないかと思う
メディアはどうなるべきか
かつてメディアは新聞社やテレビ局などの特定の企業が占有し、何を発信するかをコントロールしていた。
Twitterなどのソーシャルメディアが生まれて、誰もが何でも発信できる世界が訪れた。
しかし広告収入で維持されることによる歪みもある。
「エンゲージメント」を高めることが利益につながるので、ユーザーからより多くの時間を奪うように設計される。
新しいプロソーシャルメディアは、このような環境で自然に育まれ、その後、より広い社会的文脈で、連帯とダイナミズムに関心のある他の組織に販売されるでしょう。 Twitterのpublic timelineはこの図のwholeに相当する
https://gyazo.com/6372900530b7163c3ae1bcacc73be72f
グループウェアは本質的に"グループ"に導入される物だった(が、それぞれは独立していた)
副業(複業, パラレルワーク)の発展によって一人の人が複数の組織に属するようになるとintersecting groupの形になっていく 「民主主義」では、自分たちの代わりに議論する「代議士」を選挙によって選ぶ「間接民主制」が広く行われてきた。
これは情報処理技術が未熟だった時代の運用に過ぎない。より良い技術がより良いチームワークをもたらす。
今後、多種多様な地方自治体が「より良く市民とコミュニケーションしよう」と多種多様な試みをするだろう。
本当に良いアイデアを10代や若い人たちが考え、それが上級の人たちに理解され、実行されるまでの時間を短縮することが、民主主義を前進させる鍵なのです。若い人たちは、デジタルネイティブですから、4年に一度のアップロード帯域で十分だとは思っていませんし、レイテンシーが高すぎる。彼らは日常的にコラボレーションすることを好みます。 アジェンダ設定の権限を人々に開放すれば、各アジェンダに対しての人々の賛成反対を人々に返すことできる。公務員はもはやアジェンダを独占的に所有することはできない。 間接民主制と直接民主制の対立構造を見出す人も多いが過度の単純化
直接投票の対象が何か、法案か、予算案か
投票は「人が意思決定するための参考データ」になるのか「人を介さないアルゴリズムによる意思決定」が行われるのか
多数決は古臭いアルゴリズムの一つ
質疑で使うかもしれない図
https://scrapbox.io/files/6663143a6be53c0022f524ce.png
https://scrapbox.io/files/65e09458f840910025c0d29e.png
https://scrapbox.io/files/66ab223b3dfe43001cc8a323.png
質疑
ブロードリスニングの対象は、言語、と感じましたが、非言語的なものにも拡張されうるでしょうか。
Yes
この数年では大規模言語モデルの技術の発展で、言語データをコンピュータが扱うことがすごく容易になった
なのでそれを活用して世界をよくしようという動きが加速している
技術的には言語と画像・映像の組み合わせなど「マルチモーダル」の研究も盛んに行われており、今後その分野の技術が発展する
KJ法のように、ブロードリスニングの技術を累積的に使用する、というのはアリでしょうか?
Yes
実際台湾のvTaiwanなどでは繰り返し使った事例がある
安野さんの事例でもブロードリスニングの結果を公開して、それに対するTwitterでの反響を収集してまたブロードリスニングしたりしていた
メインはGitHubの方だったのであんまりフォーカスはしてなかったけど
議論を繰り返して深めていくという観点だと、Twitterを使うのはよくないかも
参加者のほとんどが前の議論の文脈を保ってなくて、タイムラインに流れて来たものに対して短時間の思考で返信してるから
Plurality はまだ実現されていないためコンテクストを追加して作っていくとは具体的にどういうことでしょうか?
例えば「デジタル民主主義」という言葉を使うと「政治の話だな、個人には関係ないな」となってしまう、これを「色がついている」と呼んでいた
なのでまだそういう色のついていない新しい言葉を選んで、これから色々な事例や考え方を接続していくことで、その単語の意味合いを構築していこうとしているわけ
階層性がなくなった組織はスケールするでしょうか。自由にくっついては別れるというような形になるように思います。
階層がなく個々人が好きに活動している状態は、最大限に並列化されているので、無制限にスケールするでしょう
問題は、そのような場合に人々が進む方向性に組織としての一貫性がなくなること
アライメントの問題
この問題を解決するために、階層組織を作って情報を一人の社長や数人の取締役会などに集約してそこで方向性を決め、それが各社員に伝達される、という形が生まれた
しかしこれは伝言ゲームで情報が歪んだり、伝達に時間が掛かったり、途中の人が自分に都合の悪い情報を握りつぶしたりする問題が起きた
つまりこれは、組織がスケールするしないではなく、コミュニケーションがスケールするしないの問題
そしてデジタル化によってコミュニケーションのあり方に変化が起きている
後半の「くっついたり離れたり」は未来の話ではなくて一部の人にとっては既に現在
例えば僕はサイボウズラボの社員であるわけだが、未踏社団を介して社外の人とくっついて未踏ジュニア事業をやっているわけだし、安野チームに参加して顔も知らない初対面の人たちとコラボレーションをした
Pluralityとブロードリスニングの思想では、利害が対立している場合や理想が異なる場合に、どのように対応しますか?
「対立が燃料である」と考えているので、そこから社会をより良くするためのエネルギーを取り出す方法を考えます
https://scrapbox.io/files/66ab223b3dfe43001cc8a323.png
これの2番
ブロードリスニングで妊婦さん、褥婦さんたちの普段の辛い事などの声を拾い上げて、カウンセリングすると、妊婦さん、褥婦さんの心のケアが出来るのではと思うのですが、いかがでしょうか?また、そのような研究は社会的意義も高いのではと思うのですがいかがでしょうか?
とても良いと思います。ぜひあなたが最初の一歩を踏み出してください
対立を産まないためのブロードリスニングを実現していく上で、知識の前提が違いをこえるために、翻訳機(言語的な意味ではなく、その人に伝わるようにするという意味での翻訳)としてのLLMの役割が重要だと思うのですが、どう思いますか?また実現していく上で気をつけるべきポイントなどありますでしょうか?
日本語を英語に翻訳するのと同じように、難しい漢字を小学生向けにひらがなにしたり、難しい表現を中高生向けの表現に変換したり、ということは現時点でのLLMでもだいぶできますね
問題は、ある概念を、その概念を持たない人に説明するとき、基本的には長くなること
概念には10単語で説明されることを1単語で表現して圧縮する効果がある
長くなることを許容するか、情報を捨てて長さを保つかのトレードオフになる